未来のAIがもたらすもの

by Canonical on 18 September 2023

Artificial Intelligence Appreciation Dayに注目すべき8つのトレンド

米国で7月16日は「Artificial Intelligence Appreciation Day」(人工知能感謝の日)です。20世紀にSF小説でよく扱われたアンドロイドなどのテーマや発明は、今や科学的にほぼ現実のものとなりました。1950年代、人工知能はアルゴリズム開発などの大きな成功と、計算能力の制約による大きな失敗の両方を経験しました。そして今日、AIは今年最大のトピックとなりそうです。ChatGPTは1週間足らずで10億ユーザーを達成し、企業はAIへの投資を増額しています。では、AIの未来はどうなるのでしょう?以下のトレンドが今後を垣間見せてくれます。

AIがもたらす産業革命の再来

AIは新たな技術革新の中心です。およそ2世紀前、1700年代後半に産業革命が始まってから、人々は自動車や列車を使って何ができるのか、その可能性を模索していました。そして現在、組織が模索しているのは、作業を自動化し、業務を最適化してコストを削減する方法です。AIは人々の視点や考え方を変えてきており、以前と比べれば、その支援を受けるハードルは低くなっています。人工知能が登場した当初は、恐怖や懐疑の目で見られることも多かったのですが、現在では間違いなく普及が進んでおり、その恩恵を受けています。人工知能により、どのようなパターンでも学習して解読できるという考えが世の中に広まることになり、どのような自動化を実装するのかを創造的に選択できるようになりました。また、米国や中国をはじめとする多くの国がAIの分野で他国をリードしたいと考えていることなど、さまざまな理由から発展への道のりが加速しています。オープンソースの役割も注目すべきもので、世界中で採用や貢献が進む原動力となっています。 

産業革命では、蒸気機関や機械化された工場によって生産性が向上しましたが、AIがもたらすのは反復的な作業からの解放であり、人間は有意義な活動に集中できるようになります。現在企業は、戦略を見直す機会に直面していますが、同時にさまざまな市場で新たな主導権争いが生じています。

実験から実益(ROI)へ

AIは、試して楽しい技術の域を脱しました。各企業はAIプロジェクトに明確な成果を期待し、結果を求めています。PwCが実施した第4回のAI予測調査では、回答者の72%がAIの投資収益率を評価および予測できていることがわかりました。今や人工知能は、さまざまな業界において企業のロードマップに組み込まれるほど成熟しています。また組織も、革新的なソリューションとしてAIに対する理解を深めています。たとえば、AIを活用するためにハードウェアを購入すれば、コストという明確な支出が伴いますが、それによる顧客体験の向上というソフト面の利益も把握し、評価できるようになっています。

別の観点から見ると、人工知能プロジェクトに携わる専門家たちは、自分たちの成果を実運用環境に移行させやすくなっているといえます。実験はこれからも、プロジェクトのライフサイクルの中で常に重要な要素であり続けるでしょう。ただし現在は、さらなる進化を遂げるために必要なツール、経験、データが揃っています。最近盛んにアプローチされている概念としては、モデルの展開、モデルのモニタリング、データドリフトなどが挙げられます。このような取り組みにはプロジェクトに携わった経験が必要ですが、各プロジェクトに期待される成果は何か、その成果を測るために使うパフォーマンス指標は何か、そして次のステップは何にするべきなのかを明確にすることも必要です。

このトレンドはさらに進化しており、専門家も企業もAI戦略をアップグレードする必要に迫られています。プロジェクトから得られる投資収益率に対する期待は、今後も高まり続けるでしょう。また、その適用範囲を拡大する取り組みの数も増加するものと思われます。実験に行き詰まるモデルは減少するものの、実運用環境でAIを運用する際には別の課題が生じる可能性が高くなるでしょう。専門家はモデルをよりスムーズに展開できるようスキルアップする必要がある一方で、企業はモニタリングと再トレーニングを行う体制を整える必要があります。

ハイブリッドという未来

AIを運用するうえでは、パブリッククラウドとプライベートクラウドのどちらにも長所と短所があります。パブリッククラウドは、すぐに使い始めることができますが、コストの観点からは、オンプレミスのソリューションの方が魅力的に見えるかもしれません。ハイブリッドクラウドはその中間に位置する存在であり、ブロードバンドによってインターネットが普及したように、AIの採用を加速させるでしょう。

あらゆるAIプロジェクトの中心となるのはデータです。それを複数のクラウドに分散させることには課題が伴います。ハイブリッドクラウドのシナリオでは、柔軟性とアクセシビリティを提供することで、この問題を解決します。モノリシックなアーキテクチャについては見直しが必要で、データがどこにあっても利用できるようにする必要があります。ハイブリッドクラウド戦略は、AIの拡張と運用を行うデータ基盤を提供するという点で魅力的です。データをフィードするモデルの精度が向上するため、より多くの情報に基づいた意思決定が可能になります。

ハイブリッドクラウドのシナリオは、ITコストの最適化も促進します。モデルのトレーニングや実行は、ビジネスにとって隠れたコストと見なされることが多く、予測が困難です。そのため、ITリーダーがAIへの投資を避ける原因となることがよくあります。ライフサイクルの中にはコストのかかる活動もありますが、ハイブリッドクラウドでは、そのような活動を管理された環境で実行できるため、AIへの投資が後押しされます。今後は、より多くの組織がこの戦略を採用し、AIプロジェクトを実運用環境に移行させるための有意義なツールとしてハイブリッドクラウドを利用することになるでしょう。また、それが影響して、クラウドプロバイダーがハイブリッドクラウドのサポートにかける投資額を増やし、プロバイダー間の連携に前向きになり、その実現のために必要なツールを提供するようになる可能性もあります。

オープンソースAI

企業のAIに対するアプローチは、オープンソース化というトレンドによって変わりました。このトレンドによって製品の採用が加速し、熱心な開発者によって多数の実験が行われましたが、フィードバックループも生まれたため、開発者がギャップを早く特定できるようになりました。これによりHuggingFaceMLFlowKubeflowなどのプロジェクトは、分散され、企業からサポートが提供される成熟したソリューションへと急速に成長し、実運用環境で採用されるようになりました。

このトレンドが変わることはないでしょう。AIの未来はオープンソースであり、この道をたどるプロジェクトはさらに増えるものと思われます。これにより、自分たちが興味を持ち、取り組んでいる製品に対するサポートと貢献を提供するコミュニティが拡大し、製品採用の加速につながります。Canonicalのような企業は、他のオープンソースソリューションを使用してMLOpsポートフォリオを拡大し、企業グレードを確保することになります。たとえば、Charmed KubeflowCharmed MLFlowなど、セキュリティが確保され、アップグレードが可能で、AIプロジェクト向けアップデートの恩恵を受けられる製品が挙げられます。

ここで重要となるのは、ツールではなくモデルのオープンソース化です。長期的には、機械学習モデルは、コントリビューターのコミュニティを拡大させながら、ツールと同様に進化していくことになるでしょう。さまざまな人が実験を重ねながら、有機的に発展していくものと思われます。このトレンドの始まりとなったのはHuggingFaceですが、そのプロセスは、LLMの発展によって加速されるでしょう。

総合的なエコシステム

現在のところ、AIを取り巻く環境は分断されています。ツールやバージョン管理に互換性がなく、環境の構築にまだ時間がかかります。ただし将来的には、オープンソースかどうかにかかわらず、ツールプロバイダー間の連携が改善され、プロバイダー間の統合も困難ではなくなるでしょう。機械学習のライフサイクルの各段階をカバーするソリューションを作成する場合、すべてをゼロから構築するのは大変な労力を伴います。その必要がないよう、このようなプロバイダーは提携することになるはずです。この変化により、作業の一部が自動化され、意味のないタスクに費やされる時間が削減されるため、専門家の体験に大きな影響を与えることになります。

汎用人工知能(AGI)は実現する?

これは、多くのAIイノベーターが疑問に思っていることです。AGIとは、人間の認知能力を持ち、人間が可能なあらゆる知的タスクを実行できる高度に自律的なシステムや機械を指します。AIのサブカテゴリであり、機械の知能と人間の心の間にある境界を曖昧にするものです。AGIは社会的、経済的、政治的に大きな利益をもたらします。既存の情報をくまなく収集することで、世界の仕組みを変えることになるでしょう。このような情報は、問題を解決するアプローチに基づいて、複雑な問題を解決する能力の向上へとつなげられます。AGIは周囲の環境や状況に適応できるため、多数のタスクに対応できます。その可能性は非常に大きく、がんなどの病気を治療したり、負荷が高すぎるインフラなどの根本的な問題を解決したりできるのではないかと期待が高まっています。ただし、まだ初期段階であり、実運用までにはさらに基盤を整える必要があります。

量子コンピューティングの登場

2022年、量子もつれの先駆者であるAlain Aspect氏、John Clauser氏、Anton Zeilinger氏にノーベル物理学賞が授与されて以来、量子コンピューティングを利用したソリューションへの信頼はさらに高まりました。2023年にMcKinseyが行った分析によると、量子コンピューティングへの年間投資額は、過去最高水準に達しています。将来的にコンピューティングに関連する非常に困難な問題を解決してくれる存在になるという見込みは、現実のものとなるでしょう。このテーマに魅力を感じる人材が増えている一方で、組織の中では量子コンピューティングの将来について楽観的な見方が強くなっています。

長期的には、量子コンピューティングはGPUと同様にコモディティ化するでしょう。ただし企業レベルで採用されることになり、移行するのはハードウェアだけではありません。量子コンピューティングに適した新しいソフトウェア群も開発されるはずです。IBMなどの企業が量子コンピューティングをロードマップに組み込んでいることから、産業界からの投資と支援が行われることが示唆されています。

スペシャリストを増やし、スキルギャップを減らす

Glassdoorによると、データサイエンティストだけで求人数は2万件にのぼり、さらにデータエンジニアリング、ビッグデータ、機械学習、データ分析に関連する職種が加わります。これは、市場における高需要だけでなく、スキル不足も示しています。教育機関は、カリキュラムにデータサイエンスを取り入れることで、このギャップを埋めようとしています。

データサイエンスや機械学習を専門的に学ぶ学士課程や修士課程は世界各国で増加しており、スキル不足を緩和すると期待されます。機械学習、モデル標準の構築、またはMLOpsの原則を深く理解し、この分野でのキャリアを意図的に選択するスペシャリストの数は今後ますます増えていくでしょう。同時に、AIだけに特化するのではなく、特定の「業界に」特化することを選ぶ専門家が多くなることで、別の変化も現れるものと思われます。このような専門家は、優れたAIスキルを持つソフトウェア開発者ではなく、特定分野のエキスパートになります。このようにして、AIプロジェクトを成功に導く適切な人員の組み合わせが構成されることになるでしょう。

まとめ:AIの未来は明るい

AIの未来は有望と思われます。現在、ニュースでは世界を変える可能性のある新しいプロジェクトが常に取り上げられており、さまざまなことが起こっています。あるプロジェクトが過剰な盛り上がりを見せても、その時期は必ず過ぎ去ります。しかしAIブームは、さまざまな分野での開発を加速させてきました。現在私たちは、ハードウェアレイヤー、ソフトウェアアプリケーション、AIプロジェクトに携わる専門家、そして企業がシンクロするエコシステムの出現を目の当たりにしています。量子コンピューティングからオープンソースの機械学習モデルまで、大きな進歩を見ることになるでしょう。

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