IoTデバイスをローンチする方法 – Part 2:基盤の選択

by cmoullec on 27 April 2020

(このブログは、「IoTデバイスをローンチする方法」というタイトルの5回連載の1つです。この連載では、優れたIoTのアイディアを製品として市場に送り出す際に重要な選択肢と考慮すべき点について解説します。「IoTデバイスをローンチする方法」のウェビナーにサインアップしていただくと、すべての解説をまとめてご覧になれます。)

Part 1はこちらをご覧ください:IoTデバイスをローンチする方法 – Part 1:製品化までに長期間を要する理由

IoT製品のローンチに関する前回のブログでは、製品化プロセスにおける重要な手順と問題について概説しました。IoTデバイスがどのように製品化されたかについて、30を超えるCanonicalのビジネスケース、プロジェクト概要、ケーススタディを調べています。過去の問題や解決法から教訓を得て、IoTビジネスの立ち上げに役立てましょう。

今回の記事を読んでいただくと、IoTビジネスの開始時にハードウェアの決定が迅速に行えるようになります。後半では、製品の成熟に応じて拡張可能なソフトウェア基盤について紹介します。

IoTのローンチに適したハードウェア

プロジェクト概要の分析からは、オペレーティングシステムとソフトウェアスタックでハードウェアを動作させるために、企業はUbuntuを使用していることが判明しました。多国籍で、技術に特化した企業でさえも、カーネルとOSがハードウェアとどのように連携しているかを理解する苦労はプロジェクトの進展における障害である、と感じています。時間を節約するために、ハードウェアが有効であることが確認される前にユーザーアプリ用のソフトウェアが作成されるケースが多く見られました。しかし、プロジェクトの途中でのハードウェアが変更されることも一度ではありませんでした。

この図を理解する必要はありません、Ubuntuのエンジニアに任せましょう

このような事態が発生するのは、IoTハードウェア関連でクローズアップされるような数値、たとえばRAMやCPU速度が標準化されているように見えるにもかかわらず、ハードウェアがコモディティ化されていないためなのです。回路、ピン配置、多重化周辺装置の物理的な実装の相違があるため、ハードウェアの選択はプロジェクトの開始時点において越えなければいけないハードルとなります。この選択によっては、IoTビジネスの予算超過や開発の遅延を引き起こす恐れがあります。

IoTデバイス用のハードウェアをコモディティ化するUbuntuの取り組みを活用し、認定済みハードウェアを使用することで、市場投入までの期間を短縮することができます。Raspberry Piなどのデバイスを選択すれば、ハードウェアを即座に使用できます。つまりUbuntuのOS(CoreとClassicの両方)は認定ハードウェアで十分にテストされており、信頼できるということです。加えて、認定ハードウェアでは将来的なリリースや更新ついてもリリース前にテストされます。

IoTデバイスの拡張性を自動化

多くのプロジェクトでは、IoTデバイスの展開について考え始めた段階で、Armbianなどの優れた開発用OSから別のOSに切り替えられていました。これは自動化とは逆の方向性であり、Androidでアプリを開発してからiOSでリリースするためにすべて書き直すような行為です。他には、Yoctoなどフル機能のIoTオペレーティングシステムを使って開始されるプロジェクトも散見されましたが、習得が難しいOSを使うと初期段階から遅延が積み重なってしまいます。

開発者向けのOSから別のOSへの切り替えは、現場での堅牢性、更新管理、そしてセキュリティが強固なオペレーティングシステムが必要となることに起因しています。これらの機能は、ハックしやすい開発者向けのOSには搭載されていませんが、それは当然のことなのです。 こうした機能を追加するにはオペレーティングシステムをロックダウンしなければならず、そうするとOSでできることが制限されてしまいます。あるいは、大規模な開発であれば初めから本番用OSを使用する意味がありましたが、初めてIoTを扱う場合には習得にかかるコストが大きすぎます。

この問題を解決するために、UbuntuにはClassicとCoreの両方が用意されています。Ubuntu Classicは最先端Linuxの1つで、開発者に適したオペレーティングシステムです。Ubuntu Coreはロックダウンされ、展開に特化した最小サイズのオペレーティングシステムで、IoTの展開に必要な堅牢性とセキュリティを備えています。これには、故障低減を備えた現場でのゼロタッチ更新のオプションが含まれています。ClassicとCoreは、どちらもsnapアプリのパッケージング機構を使用できるなど同じ基盤を共有しているため、開発者はClassicでアプリを作成してからCoreで展開することができます。プロジェクトの途中で移行する必要はありません。

まとめ

どのようなプロジェクトでも最初の段階が最も難しいものです。利害関係者からの支持を得るためには、意思決定を迅速に行う必要があります。当社にお問い合わせいただければ十分にテストされた手法に基づいて、御社の意思決定をお手伝いできます。ハードウェアを認定する、開発者が使いやすいエコシステムを提供する、といった難しい作業はすでにCanonicalが済ませているため、御社のIoTビジネスを正しく開始していただけます。

次回はIoTデバイス向けにアプリを作成するときの問題と、その解決策について解説します。御社の開発者がすでにお持ちの知識を活用しながら、そこにIoTの展開に必要な機能を追加していく方法について説明します。「IoTデバイスをローンチする方法」のウェビナー(英語)にサインアップしていただくと、解説をまとめてご覧になれます。

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